業務用の場合、ほぼ100%がビールで占められる。発泡酒と第3を供する飲食店はほとんどない。つまり、出荷されるビールの6割は飲食店で消費される。
大手4社がビール強化を進めると、最大の激戦地となるのは需要が大きい居酒屋チェーンをはじめとする大手外食となる。これまでは商戦激化に伴い、メーカー側から店舗への“協賛金”が飛び交った歴史があるが、変化も起きつつある。
その理由は「メーカーの協賛金が、飲食店の経営を脆弱(ぜいじゃく)にさせた面はある。自立できなくさせたから」(ビールメーカー幹部)という。現在でも協賛金はあるが、資金だけではなくメーカーがいかに外食企業に独自の付加価値を提供できるのかが、ポイントになる。
酒税改正を前にした“仁義なき協賛合戦”は避けるべきだ。また、世界的なM&A(企業の合併・買収)の波は早晩日本にも押し寄せるだろう。買収の対象となるビール会社が、少なくなっているためだ。泥沼の戦いを繰り返しているようなら、一気にのみ込まれていく。
【プロフィル】永井隆
ながい・たかし ジャーナリスト 明大卒。東京タイムズ記者を経て1992年からフリー。著書は「サントリー対キリン」「人事と出世の方程式」「国産エコ技術の突破力!」など多数。57歳。群馬県桐生市出身。