◆問われる企業や国の対応
といっても一般的なデータは知的財産権として保護されていない。であればデータは知財としては機能しないのかというと、実は事実上の知財(デファクト知財)として利用されている。特許権や著作権などの知的財産権として保護を受けられないようなデータであっても、当事者間で合意すれば、契約によってデータを利用する権利などが取引され、事実上の知的財産権のような価値を生み出すことになる。このようなデファクト知財が、契約によってどれほど生み出されているのかは明らかでないが、個人から発生するものを含めて既に膨大なデファクト知財がビジネスに利用されている。多様なデファクト知財を、誰がどういう形で保有し、どういうビジネスモデルで活用しようとしているのかがポイントだ。
このようなデファクト知財は、当座は国の法律などに規制されることもなく、無数の契約によってグローバルに発生している。このデファクト知財を制するビジネスモデルでIoTの形成する巨大な産業生態系を制することができるのだろうか。今年はIoT知財戦略元年だと予想されるが、企業も国もデファクト知財とどのように向き合っていくのかが、焦点となるIoT知財戦略を解き明かす鍵となるだろう。
◇
【プロフィル】渡部俊也
わたなべ・としや 1992年東工大博士課程修了(工学博士)。民間企業を経て、96年東京大学先端科学技術研究センター客員教授、99年同教授、2012年12月から現職。工学系研究科技術経営戦略学専攻教授兼担。56歳。東京都出身。