「iPhone」のロック解除を拒否しているアップルのティム・クック最高経営責任者(AP)【拡大】
□産経新聞客員論説委員・五十嵐徹
トランプ旋風に揺れる米国で、大統領選挙の指名獲得レースとともに、大きな注目を集めている論争がある。
IT大手のアップルと連邦捜査局(FBI)が論戦の主で、テロ事件の容疑者が持っていたスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」のロック機能解除をめぐり、「優先すべきは捜査かプライバシーの保護か」が争われている。
発端は、昨年12月にカリフォルニア州サンバーナディーノで起きた銃乱射事件だ。14人を無差別に殺害した容疑者は、その場で射殺された。このためFBIは、事件の解明には、スマホ内の情報解析が不可欠だとして、製造元のアップルに協力を要請したのだ。
問題のスマホは、誤ったパスワードを10回入力するとデータが消える仕組みなど、高度なセキュリティー機能が組み込まれていた。FBIは、容疑者の端末に限ることを条件に、こうした設定を解除するソフトウエアの作成を求めている。
◆アリの一穴を懸念
これに対してアップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は個人情報の保護を理由に、あくまで拒否する考えだ。
たとえ一件でも解除に応じれば、それが他の端末にもアクセス可能な「マスターキー」として悪用されかねない、というのがその理由だ。同社は、連邦地裁を通じた解除命令にも異議を申し立てるなど、全面対決の構えを崩していない。
米下院の司法委員会が先ごろ開いた公聴会でも、双方の代表は主張を譲らず、個人情報保護と犯罪捜査のバランスをどう取るかの議論は、最後まで着地点は見いだせなかった。