「iPhone」のロック解除を拒否しているアップルのティム・クック最高経営責任者(AP)【拡大】
背景には、2013年に明るみに出た「スノーデン事件」もある。米国家安全保障局(NSA)が極秘に大量の個人情報を収集していたことを、米中央情報局(CIA)元職員が暴露した事件だ。米世論は、個人情報の保護に一段とナーバスになっており、アップルの強硬姿勢につながっている。
アップルの対応についてメディアの賛否は割れている。
ニューヨーク・タイムズ紙は、先月18日の社説で「連邦地裁の決定に対抗するアップルの行為は、当然のことだ」と擁護。ワシントン・ポスト紙も同19日の社説で「アップルが権力の乱用から利用者のプライバシーを守るために戦い抜くことを願っている」と支持した。
これに対して英紙フィナンシャル・タイムズは19日の社説で、ロック機能の解除はあくまで限定的なものだ、との見方を示した上で、アップルに対し「振り上げた拳を下ろして、FBIの要請を受けるべきだ」と求めた。クック氏についても「(大向こう受けを意識して)派手に演じている」と皮肉っている。
IT業界でも、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が、IT企業はテロ捜査で法執行機関に協力すべきだとの考えを示して注目されている。
ところが、欧米の白熱した議論に比べ、日本でこの問題を社説で取り上げたのは、全国紙では読売と日経、毎日。論旨も、「テロ捜査と情報保護の両立を」(読売2月23日付)、「冷静に議論し解探れ」(日経2月23日付)とあくまで控えめだ。
読売は、「必要なのは、技術の進歩に対応した法整備」で、「日本にとっても重要な課題」だと指摘する。それは、その通りなのだが、食い足りなさは否めない。こうした姿勢は、むしろ、テロの重大さをプライバシー保護の名の下に埋没させる結果を生みはしないか。