【トップの素顔】渡邊五郎 三井物産元副社長(22) (2/3ページ)

2016.3.23 05:00

「上海環球金融中心」の建設現場で(右から2人目)

「上海環球金融中心」の建設現場で(右から2人目)【拡大】

 ◆経営の慧眼に感服

 社長の森稔さんは12年3月に残念ながら亡くなられましたが、多くのことを教わりました。その一端になるかもしれませんので、ある勉強会で講演した内容を少しお話しさせてください。主催者から、三井物産の話はもう聞き飽きたから、森ビルの恥部を話せよ、との命令で、「森ビルは何時(いつ)つぶれるか」というショッキングな演題を与えられました。

 森ビルは借金がどっさりある会社ですから、そうした疑問を問いかけられたことも当然かも分かりません。私はそれに対し、「そう簡単にはつぶれんぜよ」と申し上げました。その第1の理由は、森さんは経営資源の傾斜配分ができるという経営者としての大事な基軸がしっかりとしていることです。

 国内は港区、海外は上海に特化しております。あるとき森さんから「次のdestination(目的地)はどこかね」という質問があり、私は「天津はどうですかね」と言いましたら「違う。Another(もう一つの)上海だ」と言われました。

 この話を上海の社員200人くらいにしましたら彼らはすっかり燃えて感激してくれました。私は天津と言っているが大ボスは上海と言っている。確かに上海での実績をベースに党を含めた上海市政府、ならびに当社のビルのある浦東新区の幹部の信頼は抜群で、既に依頼を受けていた周辺地域の再開発を中心に万博後の事業をやることが森ビルにとっても最良の選択でした。安易に別の地域への進出を夢見がちですが、経営者としての先見性、経営判断の基盤がしっかりしていると、お世辞ではなしにその慧眼(けいがん)に感服した次第です。

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