「上海環球金融中心」の建設現場で(右から2人目)【拡大】
さらに、私は森さんにはVision(夢)とPersistence(しつこさ)があると言っています。不動産開発事業はこの2つがないとなかなかできません。かつて巷間(こうかん)、彼のしつこさの悪い面ばかり喧伝(けんでん)されておりましたが、だんだんといいしつこさが見直されてくるようになってきました。これに加えて「岩盤規制」や次元の低い悪口などをはね返す力(resilience)があると言っています。この3点セットはリーダーのあるべき資質の一つに数えられるとも思っています。
◆ときには対峙も必要
森さんは東京をアジアの国際金融の中心都市にするとか、Eco(エコ)を意識した「Vertical Garden City(垂直庭園都市)」を作るとか、もうけられないがお客さまに喜んでもらえる美術館を造るとか、その理想は果てしないものがありました。ある意味、金もうけより夢の実現を目指した経営者でもありました。
一つ心配なのは、人間みな弱い動物ですから特にオーナー会社にはボスにへつらう軍団が群れをなすのは宿命です。森ビルには、そんな上に目のついたヒラメがぐよぐよ泳ぐようになると、危険であると警鐘を鳴らしました。私自身も森ビルに在籍中、そのヒラメにならぬよう心したつもりです。私の貢献がもしあるとしたら1年に1回くらい、オーバーな言い方になりますが命かけてボスと対(峙たいじ)したことだと言っていましたが、よくよく数えてみると真剣にボスに立ち向かったのは3回くらい。後の7回は逃げ回っていたのではないかと反省しております。(聞き手 廣瀬千秋)