「ゆっくり利上げ」と発信することで、過度のドル高圧力を回避するとともに、適度な成長と物価上昇、利上げ回数をどれも達成させる狙いがあるとの見方だ。
仮に112円前後の水準が長期化するようなら、117円の想定レートを組んでいる企業にとって、増益要因がなくなるだけでなく、減益要因が増加することになりかねない。
いわゆる「円安のゲタ」を脱いでも、増益基調を維持できる企業がどの程度の割合で存在するのか-。今年は、日本企業の実力が試される年になるだろう。
ただ、利益剰余金を過去最高の355兆円も貯(た)め込み、2016年春闘のベースアップ率は昨年を下回る現実を見るにつけ、日本企業が独自の戦略を策定し、その下で積極的にリスクを取って将来を見据えた設備投資に注力しているとは思えない。
この私の見方が正しいなら、前年に計上した為替差益分の利益がなくなって、前年比減益となる企業が、かなりの割合になるだろう。
最近の電機業界における名門企業の凋落(ちょうらく)を見ると、戦略的な投資を怠った企業に未来はないとの思いが深くなる。
企業経営者の勇気ある行動が、日本経済の未来を切り開いていくことになる。「円安のゲタ」を履いているだけでは、株主に対する説明もおぼつかないことになるのではないか。
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【プロフィル】田巻一彦
たまき・かずひこ ロイターニュースエディター 慶大卒。毎日新聞経済部を経てロイター副編集長、コラムニストからニュースエディター。55歳。東京都出身。