地下水浄化工事の様子。深さ10メートルの井戸を50平方メートルに1本の割合で掘り、土壌細菌の栄養分を流し込む【拡大】
こうした浄化工事は1990年代後半から広がった。現在、国内の市場規模は年間1000億~2000億円。大成建設は土壌を掘り返さずに施工する「原位置浄化」の手法に強く、毎年100億円前後を受注。97年に石油汚染土壌の微生物浄化を国内で初めて手がけたほか、シアン化合物などの浄化でも同業他社に先んじた。
ただ塩素化エチレン類の浄化では後れをとった。土壌に注入する栄養素として酵母を用いた他メーカーの製品を使っていたが、この製品は無関係な微生物も増やすため「デハロ菌」の増殖に時間がかかるのが課題だった。
研究で特許抵触回避
そのため大成建設は2005年ごろから、代わりに利用できる栄養素の研究を土木技術研究所(横浜市戸塚区)で進めていた。
「ベースとなる有機物は、廃糖蜜やパン酵母など約30種類を試しました」と苦労を話すのは、研究リーダーの高畑陽主席研究員。食品会社などから提供された各材料に、有機酸や無機塩類などを組み合わせ、デハロ菌の増殖に最適な配合を数百種類の中から探し出すという地道な作業が何年も続いた。