
出光興産(右)と昭和シェル石油のガソリンスタンドの看板【拡大】
石油元売り大手の出光興産の創業家の代理人は28日、同社が来年4月に予定している昭和シェル石油との合併に関し、創業家が反対を表明したことを明らかにした。創業家は拒否権を発動できる33.92%の株式を保有しており、出光の経営陣が第三者割当増資などで創業家の持ち株比率を引き下げるなどの対抗措置を取らない限り、合併できない可能性が出てきた。
代理人によると、創業家は国内石油業界で、巨大石油資本「石油メジャー」に自力で対抗し、国内の石油カルテルとも一線を画しつつ独自の経営方針を貫いてきた出光と、英蘭系石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェルを親会社とする昭シェルとの企業体質の違いを懸念。
特に全社一丸となって事業を進める社風で労働組合のない出光に対し、昭シェルには労組があり、経営への影響力も強い点を問題視している。この対照的な両社について、外部からは「『水と油』のような関係で一緒になるはずがない」と指摘されてきたほどで、合併には克服すべき困難は大きく、効果をあげるには時間を要するという。
さらに、イランと親密な関係を持つ出光が、サウジアラビアとの関係が深い昭シェルと合併するのは、両有力産油国の対立が激化している中で適切ではないとして、反対を決めたという。
出光が同日開いた株主総会で、創業家の代理人である弁護士が合併計画に反対の意見を示したうえで、出光の取締役10人の再任に反対票を投じた。会社側によると、再任議案自体は賛成多数で可決されたという。大株主である創業家の反対姿勢が表面化したことで、昭シェルとの合併計画は難航必至の情勢となりそうだ。