
鈴木俊宏氏(撮影・春名中)【拡大】
スズキの新たなCEOに、鈴木修会長の長男の鈴木俊宏社長が就いたことで、「結局、スズキは鈴木一族の会社」という印象がより強まったのは間違いない。俊宏氏は新CEOとして、社内風土の改善を含めた再発防止に確実に取り組むことが、社会に対する責務となる。
俊宏氏の選任理由について同社は「次の経営戦略立案の中心人物で、適任と判断した」と説明する。確かに俊宏氏のCEO就任は、昨年6月に社長に昇格した段階から事実上、既定路線だった。燃費不正問題により、就任時期が早まっただけとの指摘もある。
不正問題に伴うスズキの社内処分では、鈴木会長が兼務していたCEO職を返上し、技術担当の副社長が辞任しただけだ。俊宏氏への処分は7月からの半年間、報酬を30%減額するにとどまる。
より悪質な燃費データ改)竄(かいざん)を行っていたとはいえ、三菱自動車は社長と技術担当の副社長が引責辞任した。俊宏氏も社長として現場の不正を見抜けなかった責任は当然大きい。創業一族が率先して厳しく襟を正す姿勢を示さなければ、CEO交代も単なる世襲とのそしりは免れない。
鈴木会長の手腕に依存した経営体質から脱却し、俊宏氏が目指す集団指導体制に移行するには、風土改革が不可欠だ。俊宏氏は29日の株主総会で、株主にこう誓った。
「社内の風通しの良さを確保して、スズキらしい商品、お客さまの期待を超える商品作りをしていきたい」(今井裕治)