
高級スポーツ車「GT-R」のエンジンを手組みする「匠」の候補として働く日産自動車横浜工場の大竹由希子さん=横浜市神奈川区宝町の同工場(会田聡撮影)【拡大】
--匠の仕事は
「普通のエンジンはラインの工程ごとに担当者を割り当て部品を付けるが、匠はまず中核のブロックを電動の台車に乗せて1人で部品を付けていく。ボルトを締め付ける作業のほか、部品間の隙間などを計測して調整する。隙間の計測は少しずれると油漏れなどにつながるので、気を使う作業だ」
--機械組みの代わりに、手間も時間も掛かる手組みをする理由は
「バルブクリアランスという部品間の隙間を図る作業は、100分の1ミリ単位で行っている。計測用の工具を隙間に入れた際の摩擦で確認するが、同じ100分の1ミリでも1・5に近いのか、2・5に近いかは手の感覚じゃないと分からない。計測を2回やるとなじむ部分も先読みするのが機械では難しい部分だ。普通の車種ならば規格も広いので誤差の範囲の違いだが、GT-Rは究極を狙っている」
--わずかな違いを走りに差はでるか
「全然違う。サーキットでテストドライバーの運転に同乗し、普通のエンジンと乗り比べた。手組みの精密なエンジンは燃焼の爆発力が違うし、排気音が乾いたファーンと良い音がする。わずかな違いでアクセルを踏んだ際にクルマが止まった感覚になるというレーシングドライバーもいる」