
撮影:大石一男【拡大】
--海外では、どんなことに影響を受けましたか。
辰野:実は留学前に「日本人として、日本のことを知っておかねば」と思い、京都で工芸品を見たり、茶道を始めたりしたことの影響が大きいですね。伝統的な文化の持つ力にすっかり魅了されたものの、当時の留学先で日本といえば、最先端の電化製品のイメージばかり。海外はおろか日本の若者ですら、日本の工芸品のクオリティーについて知らない状況を、なんとかしたいと思うようになりました。
--帰国後は、着物の生地からガラス、金属など、多岐にわたる素材のデザインを手がけていますね。
辰野:京都で伝統産業の活性化に関わっている方にご縁があり、京都の組紐(くみひも)屋さんとストラップを作ったのが最初の取り組みでした。人のつながりに恵まれて、最近は産地の方からお声がけをいただくことが多いですね。形をデザインするだけに留まらず、製品企画の提案から、ロゴやパッケージなどのグラフィック、展示のディスプレーまで、あらゆるデザインを手がけています。
--伝統的な技術に対して、新しいデザインの道筋をどのように見つけ出していくのでしょう?
辰野:実際に産地で職人の手仕事や技術を目の当たりにすると、自然にアイデアが浮かんでくるんです。そこで得た感動を、どうやってより多くの人へ伝えていくか。素材や技術の魅力を分析して、それを生活に即したデザインへ落とし込んでいく感覚です。例えば備前焼のカラフェ(水差し)は、素材の美しさはもちろん、水をまろやかにしたり花を長持ちさせたりする自然由来の力を、現代の生活にどう取り入れるかという発想から生まれたもの。海外から岡山まで買い求めに来る方もいて、手応えを感じています。