元気届ける十勝の出張すし 震災乗り越え夫婦で再起 (1/2ページ)

2016.9.26 05:00

北海道新得町の食事会に出張し「飾りずし」を披露する桑添達也さんと妻、野の子さん
北海道新得町の食事会に出張し「飾りずし」を披露する桑添達也さんと妻、野の子さん【拡大】

 東日本大震災で父親の店を継ぐ夢を失った仙台市出身のすし職人、桑添達也さん(44)と妻、野の子さん(32)が、北海道・十勝地方で夫婦二人三脚の出張すし店「極楽寿司」を営んでいる。一度は職人の道を諦めたが、妻の地元、新得町への移住を機に「人を喜ばせたい」と再びすしを握り始めた。

 「はい、お次、中トロね」。18日夜、新得町の小野瀬加栄子さん(64)が家族や友人と開いた食事会で、白衣姿の達也さんが腕を振るっていた。持ち込んだショーケースにマグロやサンマ、貝類など新鮮なネタを並べ、12人の客から次々に舞い込む注文に応える。着物姿の野の子さんは配膳担当だ。

 達也さんは、赤く色付けした酢飯や卵焼き、キュウリなどを組み合わせて模様を作る「飾りずし」と呼ばれる巻きずしも得意。客の前で巻いて見せ、包丁を入れた断面に色鮮やかな花や左右対称の模様が現れると「わあ」と歓声が上がった。

 達也さんは、東京都目黒区のすし店で15年間修業。地元に戻ってからは、父親が営む仙台市太白区の店とは別の店で働いた。「一人前になったら店を継ぐ」と心に決めていたが、東日本大震災が発生。父親の店は半壊し、再建を断念した。「積み上げてきた人生も、崩れてしまった気がした」

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