
定例会見で記者の質問に答える日本郵政の長門正貢社長。グループの成長に向け、次の一手を進める【拡大】
しかし、金融政策により利回りの低下は想定を上回るペースで進む。運用資産が巨額だけに、リスク投資へのシフトも容易ではない。6月末の運用資産に占める国債の比率は38.8%で、3カ月前から1.3ポイント低下したに過ぎない。
「目玉となる施策がない」。ある自民党議員は、日本郵政グループの戦略に苦言を呈す。ファミリーマートやイオン、第一生命保険と協力関係を築くなど、新しいサービスを提供しようとする動きは出ている。だが、経営陣が模索する日本郵政によるM&A(企業の合併・買収)やゆうちょ銀による地銀との連携など、スケールの大きな戦略はまだ、描かれていない。
日本郵政グループをめぐっては、政府が日本郵政株の80%超、日本郵政が金融2社のそれぞれ89%を保有するという株主構成が特例で維持されている。株の売り出し時期が焦点だが、株価が低迷しているうちは実施しにくい。真の上場企業に脱皮するには、投資家に成長性を確信させる“次の一手”が必要といえる。
3社を上場に導いた西室泰三社長(当時)の突然の退任に伴い、長門氏がトップに就いてからまだ7カ月で、真価が問われるのはこれからだ。長門氏は「剣道と同じで構えが大事。次のステップに進むための準備をしてきた」と強調している。(高橋寛次)