しかし、かつて7行あった専業信託銀行は再編の波に洗われ、三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行の3行に集約された。かつ、3行の立ち位置はそれぞれ微妙に異なる。だが、信託に寄せる思いは共通している。いずれも信託が主業であることにかわりはない。
「信託はもうかる商売ではない」。よく信託銀行の経営者が口にした言葉だ。信託業務は薄利多売であり、労多くして利の少ない信託報酬が収益の源泉だ。このため戦後の金融行政では、専業信託には信託業務と銀行業務を兼営させ、かつ不動産や証券代行など多様な業務を併営させることで経営の安定を図った。いずれも信託業務を大切に育てるためで、実際、その後、日本の商業信託は世界で最も発展した。
だが、ともすれば信託はもうからないため、経営のインセンティブは収益性の高い銀行業務や併営業務に傾きがちとなる。バブル期では不動産業務と融資がセットで推進され傷を深めた。そして今、投資信託などの窓口販売で高い手数料を得るため、顧客の立場を顧みない回転売買に傾注する信託銀行があることは残念である。