百貨店業界は訪日中国人観光客による「爆買い」が鳴りを潜め、アベノミクスによる資産効果で一時膨らんだ富裕層の購買意欲も萎え、都心旗艦店が収益を支える構図は崩れ、不採算の郊外・地方店を切り捨て出した。実際、三越伊勢丹ホールディングス傘下の三越伊勢丹は、三越千葉店(千葉市)と三越多摩センター店(東京都多摩市)の営業を17年3月に終了し、エイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)傘下の阪急阪神百貨店も同年7月に堺北花田阪急(堺市)を閉店する。
小売り主要3事業は歴史的な変革期
セブン&アイはさらに踏み込んだ。井阪社長は10日6日、H2Oと資本・業務提携し、そごう神戸店(神戸市)、西武高槻店(大阪市高槻市)、そごう西神店(神戸市)の3店舗を譲渡すると発表した。再び構造不況に見舞われる百貨店事業で「選択と集中という新しい軸」(井阪社長)を経営に採り入れる姿勢を打ち出し、2005年前後に起きた百貨店の合従連衡の再来をも想起させた。
半面、米投資ファンド、サード・ポイントによる百貨店事業のグループからの全面切り離しの要求とはほど遠い。さらに、祖業の総合スーパー、イトーヨーカ堂の閉鎖店舗も40店舗と従来計画から踏み込まず、聖域なき構造改革は道半ばとの印象は拭えなかった。ライバルのイオンも総合スーパー事業の不振で3~8月期決算は7年ぶりの最終赤字に陥り、「買うものがない」と消費者からそっぽを向かれた総合スーパー事業の立て直しは一筋縄でいかない。