マスク氏が発表した火星移住構想の概略はざっとこうだ。まず2018年に火星探査のために無人宇宙船を打ち上げる。その4年後をめどに有人宇宙船も打ち上げ、住居や食料製造施設などを整備しつつ移住を開始。マスク氏によれば、40年から100年で「火星で完全に自給自足できるようになる」という。
このために120メートルを超す史上最大のロケットを製造し、一度に100人程度を火星にピストン輸送。計画では、22世紀までに約100万人が移住可能になるとしている。
最近日本で公開された話題映画「インフェルノ」は人口爆発をテーマにしているが、温暖化問題なども重なって地球にいずれ人類が住めなくなるのでは、との指摘は以前からある。マスク氏が火星移住構想を推進するのはこうしたリスクを避けるのが狙いで、「人類をマルチプラネタリー(複数の惑星に暮らす)種族にする」と訴えた。
ただ、課題は山積しており、最大のネックはもちろんコスト面。マスク氏によれば、火星に人間1人を送る費用は現在は10万ドル(約1兆円)程度かかる。これをロケットの再利用や、火星で調達可能なメタンを燃料に使うことなどで、ゆくゆくは1000万~2000万円に抑えることが可能とし、巨額の私財もなげうつという。
それでも間に合わないので、マスク氏は「火星旅行に投資したい人は大勢いると思う。政府も注目してくれたらうれしい」として、最終的には官民一体の巨大プロジェクトになることを期待しているが、マスク氏のもくろみ通りに進むかどうかは不透明だ。