安倍晋三政権が目指す「1億総活躍社会」には「ワークライフバランス」と、そのための長時間労働の是正が欠かせない。特に女性の活躍を「1億総活躍」の柱とするのであれば、結婚や出産の妨げともなる長時間労働は、社会全体で直ちに是正すべきことである。
政府も働き方改革担当大臣の下に「働き方改革実現会議」を置き、これまでに総理と現場との意見交換会を4回開催。どこに問題があるのか、総理が現場の声を直接聞いて、政策に反映させようという並々ならぬ意欲を感じる。その一つとして、昨年末には「同一労働同一賃金」のガイドラインを公表した。
ただ、このガイドラインは「非正規社員の待遇改善を実現する方向性を目指す」となっているように、働き方改革が待遇面、特に非正規社員のそれを改善するということに矮小(わいしょう)化されているように見える。本来、「1億総活躍社会」を目指す上での「働き方改革」は、仕事や労働を含めた社会の価値観を問うことなしに、成し遂げられないものであるはずだ。それにもかかわらず単に待遇面の議論になっているのは、安倍政権が目指してきた「女性の活躍」が思うように進まないことへの、場当たり的な対処でしかない。
「女性活躍推進法」は、女性たちから評価する声がある一方、育児や介護など家庭と両立する難しさから、「そこまで働きたくない」「働けない」という声も大きく、全体としては不評であった。労働力不足を補いたい企業側も、能力や意欲より性別で管理職を登用するということへの戸惑いも見られた。
そこで、非正規でもよいという女性たちの思いに応えるべく、非正規社員の待遇改善を掲げることで、女性を社会で活用しやすくする環境を整えようとしているのが、今の状況だろう。