
アサヒグループHD会長 泉谷直木氏【拡大】
地方での講演に、女房--職場結婚なんです--が同行していたことがありました。会場のホテルで300人を前に講演をし終えたら、「信じられない」と女房が驚いたんです。「あがり症で、人前では口ごもって『あー』『うー』としかいえなかったのに、あんなに上手にしゃべれるようになるものなの?」と。私は私で努力していました。
講演をしろといわれれば、50分でも1時間でも、話す内容の原稿を書くことはできます。ただし、緊張すると早口になるということが自分でわかっている。そこで、事前に講演内容をすべて原稿に書いて、家でゆっくりと読み上げてカセットテープに吹き込みました。夜、その録音テープを聴きながら、どのくらいの速さで話すのが聞きやすいのかと、時間を測って練習を繰り返したんです。
会う予定が事前に決まっている人の場合は、その相手について必ず準備をします。ただし、それ以外の準備もあります。それは誰が相手でも通じる話の切り口を常に持っていなければならないということ。いちばん簡単なのは、毎日、朝刊をちゃんと読むことです。
その日の朝刊に出ていた記事を話題にしながら「御社はいかがですか」と切り出すこともできます。雑誌にも目を通して、世の中で少し先行する企業の例や、より深い情報を見つけておく。こうした最低限のことをしていれば、どんな場合も恐れる必要はありません。インターネットのニュースサイトを見て、その日の新しいトピックを探しておくことも重要でしょう。人から聞いた面白い話を書きとめてもいいし、あるいは、ウィキペディアで調べることでもいいんですよ。私は、パソコンもスマートフォンも使っていますが、やっぱり紙に書きながら考えることのほうが断然いい。長年、能率手帳を愛用していて、電話帳のページも、図を描いたりしてノートとして使っています。誰に会っても、「株価が少し荒れていますね」とか、「原油価格が上がってきましたね」という話はできる。少し踏み込んで、「中東の王様も、お金をどう運用すればいいのか困っているかもしれませんね」とユーモアを交えることもできます。別の言い方をすれば、その日の朝刊も読まずに人と会うということは、ビジネスパーソンとして恥ですよ。