
アサヒグループHD会長 泉谷直木氏【拡大】
この最低限の準備を踏まえたうえで、会話術の基本として、謹厳実直という言葉を、私は「近元実直」といいかえて使っています。
最初の「近」は、相手に近づくということ。共通の話題のテーブルに着くということですね。そのために、やはり準備が必要になります。営業担当者の商談であっても、われわれ経営者同士の会話でも、相手も忙しいのだから、何のために会うのか、まず目的をはっきりさせておく。話すというのは、何かを実現するために自分の思いを伝え、相手の合意を得るということですよね。そして、「近い」ところから準備をすることです。初めて訪問する企業なら、ホームページを見て、経営理念やビジョンについて知っておく。その企業にまつわる最近の記事も見る。業界で何が起きているか調べる。お茶飲み話から始まるかもしれませんが、話が終わるころになって、ようやく仲良くなるようではだめで、最初から一発で距離を縮めなければなりません。
「あした息子さんの誕生日だろう」
私は営業の仕事をしていたときも、必ず先方について事前に調べてから行きました。いま、社員たちと飲むときでも、前日に、会う社員の長所や趣味、データを調べて手帳に書き出します。
若い社員は、会長の私を前にして、緊張しながら、所属部署がどこで、どんな仕事をしているかと自己紹介をするわけです。そのようなとき、「君は学生時代にアーチェリーをやっていたんだね」とか「あした息子さんの誕生日だろう」と話しかけることができれば、相手の気持ちが楽になって、すぐに距離は縮まりますね。相手の話題から共通の話題に移っていければ、すぐに共通の土俵に上がることができます。