世界経済の先行きもトランプ米政権の発足で見通しにくくなっている。豊田社長は労使協議で「従来の延長線上で、今後起こりうることを想定することが難しくなっている」と述べた。
とりわけトランプ大統領の通商政策は、トヨタの経営に打撃となりかねない。
トランプ氏は北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉について、対メキシコを中心に見直しを進める考えを表明。再交渉がまとまらず、NAFTA離脱を決断すれば、メキシコを北米向け輸出車の生産拠点にするトヨタは戦略の練り直しを迫られる。さらにトランプ氏が「国境税」を導入し、米国への輸出車に高い税率を課した場合、トヨタが堅持する「国内生産300万台体制」への影響も避けられない。
トヨタ経営側はこうしたリスクも踏まえ、今春闘ではベアより定期昇給に当たる賃金制度維持分で報いる姿勢を示す。3月15日の集中回答日に向け労使で激しい攻防が続くのは必至だ。