
ホンダのF1総責任者、長谷川祐介氏=2016年12月、東京都港区【拡大】
昨年3月には巻き返しを期し、08年の撤退前にエンジニアを務めた長谷川氏が総責任者に就任。ハイブリッド車(HV)などの開発経験のある長谷川氏の指揮の下、チームは弱点の排気熱のエネルギーを取り出す効率を改善し、16年はチームで年間6位に入った。だが長谷川氏は「F1の技術水準には達したが、まだ性能は不足している」と、上位チームとの差を語る。
技術と人材を磨く
ホンダが悪戦苦闘しながらも、F1に挑戦し続けるのは技術開発や人材育成につなげるためだ。決勝の燃料総量が「100キログラム未満」と厳しい規制が課される中、王者の独メルセデス・ベンツはエンジンの熱効率をディーゼル車並みの40%以上まで上げているとされる。燃費の改善につながる熱効率向上は市販車にとっても大きな課題で、技術の応用が期待できる。
また、人材育成も大きい。ホンダの開発チームは復帰で若返り、30代が中心とみられる。上位チームは年4億ユーロ(約480億円)超といわれる莫大(ばくだい)な予算をかけ、世界で約20戦を戦うF1は「モータースポーツの頂点で、技術やエンジニアが鍛えられる」(長谷川氏)。
ホンダは初参戦からわずか2年目に初優勝を遂げ、自動車事業の躍進のきっかけをつかんだ。今季の戦いを将来の飛躍につなげることができるか。長谷川氏は「表彰台を取らなければいけないという気持ちはある」と前を向いた。(会田聡)