大西氏は「検討段階で正式決定はしていない」と弁明したものの、突然の発言に社内に動揺が広がり、地方の取引先からも問い合わせが殺到した。特に反発したのが石塚会長ら三越出身者だった。
三越伊勢丹HDは2008年の統合以降、リストラ対象は旧三越が大半で、旧伊勢丹で閉店したのは吉祥寺店のみ。大西氏は旅行や婚礼など事業の多角化を進めたが、目立った成果を出せなかったことも反発を強めた。旧三越と伊勢丹での待遇差も重なり、「社内が一枚岩になれなかった」(三越伊勢丹HD関係者)。
三越伊勢丹HDでは過去にも、お家騒動が勃発している。旧三越で1982年に起こった「三越事件」だ。当時社長だった岡田茂氏の強引な経営手法に不満がくすぶる中、岡田氏の女性問題と不正な利益供与の疑惑が浮上。取締役会での解任決議につながった。
もっとも、今回のトップ交代は、不正疑惑を背景にした過去のお家騒動とは異なる。問題を引き起こしたトップが交代すれば、それで解決というわけにはいかない。対立を引きずり社内が一つにならなければ、新経営陣が5月にも発表する新しい構造改革の実行にも支障を来しかねない。(大柳聡庸)