
JR貨物本社の指令室。左が室長を務めた安田晴彦さん=2011年3月(ジェイアール貨物・リサーチセンター提供)【拡大】
全国を網羅するJR貨物の輸送システムはこれまで幾度も大規模災害に見舞われてきた。復旧の手順はマニュアル化されている。揺れが収まると同時に指令室長の安田さんに異常時対策の職務が与えられる。社内の各部門のリーダーらが続々と指令室に集結してきた。
震源は宮城県沖だが、津波警報が全国で発令されたため、すべての鉄道が停止を余儀なくされた。日本の鉄道物流が完全に止まった瞬間だった。
津波で東北太平洋岸の主要港は壊滅。仙台空港なども被害を受け海路、空路も遮断された。東北自動車道も破損が伝えられた。
「人員の安全を確認してくれ」。安田さんの指示に現場にいた職員が電話に飛びつく。JRグループ内でのみ使われる鉄道電話だけが通じたが、それでも宮城県石巻市などの拠点とは連絡がつかず、数日にわたり安否が確認できない職員もいた。全国で運行中の貨物列車の所在確認が行われたが、津波被害を受けたエリアからは当初、情報がほとんど入らなかった。