その結果、新規事業の立ち上げや店舗リニューアルなど重要事業の多くが予定より1年から1年半遅れとなるのが常態化。たとえば銀座三越の免税店フロアが失敗といわれるのも、事業化が遅れに遅れ、中国人観光客による「爆買い」ブームが去ったあとにオープンしたからだ。
笛吹けど踊らず。なぜそうなるのか。
「最大手だけに社員の危機意識が薄い。業績が悪化し、異常な形で社長が代わるというのに、『もう新規事業に注力しなくて済む』とばかり、社員の多くがほっとした表情。従来の百貨店事業だけで、これからも食べていけると勘違いしている」(前出の関係者)。
大西氏辞任について「『外』の人が悲しみ、『中』の人はおおむね歓迎している」と指摘するのは、百貨店事情に詳しいライターの中沢明子氏。「かつて私は衣服の8割を伊勢丹で買っていたのに、今はほんの1割程度。同様に伊勢丹ファンの多くが来店頻度を減らしている。そこに危機意識を持たなければいけないのに、新経営陣にその感覚があるのかどうか疑問です」。ほっとしている場合ではないはずだ。
(プレジデント編集部・面澤淳市=文 宇佐美雅浩=撮影)(PRESIDENT Online)