さて、新ビールのコンセプトはバッチリ決まっている。「産経らしく“辛口ドライ”にしましょう!」と意気軒昂に口火を切る筆者。あれ、なんだかブルワーの顔色が曇った気がするぞ…? 「うちの主要読者は40~50代のビジネスパーソンです。クラフトビールに馴染みがない世代でも美味しく飲める商品を作りたいです!」と続けるも、鈴木社長から返ってきたのは「正直、一番やりにくいところ」という厳しい言葉。「私どもは業界でも尖ったビールを造っているので、普段クラフトビールを飲まない熟年層は最もハードルが高いです」と鈴木社長は苦笑い。金澤ブルワーも「クラフトビールメーカーで“辛口”を謳うところはそうないです。大手と差別化しようというメーカーが多いので…」と困惑気味。開始1分、早くもつまずいた。
低迷市場でクラフトビールが快進撃 大手参入で競争激化
それにしても、クラフトビールの快進撃には目を見張るものがある。低迷の打開策をなかなか見いだせずにいる国内ビール市場は縮小の一途をたどり、大手5社が発表した2016年の国内ビール類出荷量は前年比2.4%減。12年連続で過去最低を更新した。
一方、クラフトビールは威勢がいい。16年1-6月の地ビール出荷量は前年同期比4.2%増と、不振の大手を尻目に好調ぶりを見せつける。関東近郊では夏になると毎週のようにビアフェスティバルが開催され、「ビール離れ」がまるで嘘かのように若者で活気づく。都内ではブルーパブと呼ばれる醸造所併設のレストランも次々とオープン。コンビニ棚でも今や常連となり、お馴染みの国内ラガーと陣取り合戦を繰り広げる。