紳士服大手各社が先を争うように取り組む事業多角化は、スーツビジネスが限界を迎えつつあることを示している。なかにはアパレル会社が外食事業に参入することに突飛な印象をもつ読者がいるかもしれないが、郊外型店舗と併設することで相乗効果を引き出す狙いがある。各社とも体力がある間に新たな成長分野を確立したいという思惑があるのだ。
しかし、各社の多角化が必ずしも祖業を補うまでの収益事業に育つとは限らない。たとえばAOKIの場合、非スーツの牽引役だったブライダル事業には婚姻件数の減少という逆風が吹き込んでいる。また大型の式場開設には多額の投資がかかるため、市場環境の悪化には大きなリスクがある。人口減少時代に入り、デフレ脱却もままならないなか、人手不足や人件費の高騰という圧力も加わる。個人消費をうまく捉えることができるか。「スーツ屋の商法」には多難が予想される。(PRESIDENT Online)