インフラ輸出を成長戦略の柱に掲げる安倍晋三政権にとって、ベトナム初となる地下鉄工事を日本のゼネコンが受注した意義は大きい。完成までの長期的な収益が見込めるほか、実績を積み上げることで路線拡充の際は新たな受注も見込めるためだ。アジアのインフラ市場を取り込む動きは激しさを増しており、日本は武器となる高い品質をいかにアピールするかが一段と問われている。
アジア開発銀行の報告書によると、2016~30年のアジアのインフラ需要が26兆ドルを超えると試算。現状の投資額は需要の半分にすぎないとする。少子高齢化で国内需要の縮小が避けられない中、政府は成長戦略で10年に年間10兆円だったインフラ受注を20年に約30兆円に引き上げる目標を掲げる。
清水建設も売上高の海外比率を2割まで高めようと、ベトナムだけでなく、まだ地下鉄のないミャンマーなどに注目。インドネシアの首都ジャカルタの大量高速交通システムの建設でも最初の受注を確保しており、アジアでの足場を築きつつある。
だが巨大市場をめぐる競争は激しい。「ODA(政府開発援助)を活用した案件では日本が優位だが(韓国や中国などに)価格競争で勝つのは難しい」。清水建設の河合信之・国際支店ホーチミン地下鉄建設所長はインフラ整備をめぐる現状をこう打ち明ける。特に広域経済圏構想「一帯一路」を掲げる中国が攻勢を強める可能性は高い。
日本が勝ち残る鍵は、過密な都市環境で培われた難易度の高い技術の磨き上げだ。大林組もニュージーランドで総重量2500トンという世界最大級のシールド機を稼働させるなど差別化を図る。河合氏は「当たり前の技術はまねされる。日本しかできない技術や新しいアイデアで勝負する」と話している。(ホーチミン 臼井慎太郎)