日本郵政は、野村不動産ホールディングス(HD)の買収が白紙となったことで、新たな事業の柱の構築に向けた成長戦略の見直しを進めることになる。19日には傘下のゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の新規業務が総務省と金融庁に認可されたが、黒字化には時間がかかり、収益への貢献も小さい見通し。日本郵政はなおM&A(企業の合併・買収)も視野に置くが、国内外の物流事業の立て直しが喫緊の課題となりそうだ。
「野村不HD買収で毎年、収益が数百億円入ってくるのは大きい。高くても買うべきだという意見は最後まであった」
日本郵政幹部は、買収価格の交渉が行き詰まったことによって“破談”にせざるを得なかったことについて、苦渋の表情でこう述べた。
関係者によると、郵政側と野村不HDの筆頭株主の野村ホールディングスなどとの価格交渉が本格化したのは6月に入ってから。5月に買収交渉が報道されて以降、野村不HDの株価が高止まりしたこともあり、郵政側と野村側の交渉は難航。5月中旬から始まった野村不HDの資産査定も中断していたとみられる。
そもそも日本郵政は、傘下の日本郵便が赤字体質で、金融2社の株式売却後、確実に収益を確保するために、野村不HDの買収で不動産事業を収益の柱にする考えだった。