「米国産LNGの調達を希望する電力事業者などの需要家に対し液化役務を提供することで、発電システム事業の拡大につなげるとともに、エネルギー最適活用に貢献していくつもりだった」(広報担当者)。東芝は、日本の需要家が価格競争力のある米国産LNGを調達できるよう日本政府の支援を仰いでいたという。
だが米国は日本のような自由貿易協定未締結国には許可がなければ輸出ができない。そのような中で米フリーポートLNGエクスパンションは米エネルギー省に自由貿易協定未締結国向けLNG輸出の許可を申請し、13年に承認された。そして東芝は、フリーポートLNGエクスパンションの子会社、FLNGリクイファクション3(FLNGQ3)とLNGの加工契約を締結すると発表した。
しかし、事態は思うように進まなかった。原油価格の下落が東芝を厳しい局面に追い込んだ。「LNGは通常、原油価格にリンクして価格が決定されます。ところが、米国産のLNGは別。米国内の天然ガス価格がベースとなる」(経済産業省関係者)。そのため、原油価格が下がればLNG全体の価格が下がり、米国産LNGのうまみはどんどんなくなる。その結果、米国産LNGは東芝にとって厄介なお荷物となってしまった。
当面は東京電力ホールディングスの子会社と中部電力が共同出資する燃料・発電事業者、JERA(ジェラ)と販売やマーケティング活動を支援してもらう契約を結んだというが果たしてどれだけ売れるのか。東芝の危機はまだまだ続く。
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【プロフィル】松崎隆司
まつざき・たかし 経済ジャーナリスト。中大法卒。経済専門誌の記者、編集長などを経てフリーに。著書は多数。7月に「東芝崩壊19万人の巨艦企業を沈めた真犯人」を出版。54歳。埼玉県出身。