ヤマトの値上げ宣告、悲鳴上げる中小企業 「担当者も出向かず、メール1通で…」 (4/4ページ)

 この4月、ヤマトはアマゾンの当日配送からの撤退を発表したが、実は昨年末の時点で、ヤマトはパンク寸前の事態を経験しているという。

 「前の日に届け切れなかった荷物が残ることを残荷といいますが、残荷は非常にまずい。営業所で残荷が積み上がっていくと、オペレーションは煩雑さを増し、混乱をきたします」(同)

 セールスドライバーが荷物をあらかた配り終えた夕方になって、当日配達の荷物がドカンと運び込まれる。そこからもう一度配達に出なければならないし、不在で持ち帰る荷物もある。これが営業所の残荷を増加させることにつながり、ただでさえ忙しい年末にとうとう爆発したということだ。

 物流の価値を毀損する「送料無料」という呪い

 EC普及による小口荷物と再配達の増加により、儲けが薄いにもかかわらず負荷は高まるばかり。そして労働者不足。もうこれ以上、従来の運賃ではもたない。それがヤマトに限らず、物流業界全体の本音だ。

 「経済や生活を下支えしている物流は、もう少し正当な評価を受けてもいいのでは。そんな問題意識は関係者に共通するところです。だからヤマトの値上げをきっかけに、物流の適正な対価を見直す流れが生まれてほしい。日本では昔からそば屋の出前もタダ。水と物流はタダだという刷り込みがあるんです。象徴的なのは『送料無料』という言葉ですね」(同)

 企業からは不満の声も上がっているヤマトのアナウンスにしても、物流業界全体が抱える問題を今一度世に問うという効果はたしかにあったといえるだろう。一般の消費者にとっては言わずもがな、企業の物流担当者であっても、物流の仕組みや、そこにかかるコストを意識させられる機会はそうそうない。

 宅急便の生みの親である小倉昌男氏の「需要者の立場になってものを考える」という理念が、安くて便利なサービスを創出した一方で、値上げを踏みとどまり、自らの首を締めてきたという側面もある。

 物流の正当な価値を世間に認めさせる。30年来、手付かずのままになっていたこの課題を解決できるか否かに、ヤマトだけでなく、日本の物流業界全体の命運がかかっている。

 (ジャーナリスト 唐仁原 俊博)(PRESIDENT Online)