日本の洋上風力発電が巻き返し 進む法整備、大型プロジェクトが相次ぎ始動 (2/2ページ)

国内の洋上風力発電設備=千葉県銚子市沖
国内の洋上風力発電設備=千葉県銚子市沖【拡大】

  • 洋上風力の普及は設備メーカーにとっても追い風になる(MHIヴェスタスの工場)

 ルール化の要望は以前から寄せられてきた。経団連は、事業者が一般海域の長期専用を求めた際に、自治体にとって参考となるガイドラインの整備を提言。政府も13年に定めた「海洋基本計画」で「海洋再生可能エネルギーの利用促進」を盛り込み、その一環として洋上風力の普及を図ろうとしている。現在検討中の新法は、そうした流れに沿ったものだ。

 洋上風力は太陽光と違って夜間も発電できる。陸上風力と比べても強い風を安定的に得られるほか、設置面積を広く取れるため風車を大型化しやすい。国土面積が狭く、四方を海に囲まれた日本は、洋上風力向きとされる。

 大型プロジェクト始動

 このため日立キャピタルなどが約1000億円をかけて茨城県の鹿島港で設置を計画するなど、大型プロジェクトが相次ぎ始動。発電設備を手がけるメーカーも絶好の商機ととらえ、三菱重工業とデンマークの風力発電設備大手ヴェスタスの合弁会社、MHIヴェスタスは、日本市場に本格参入し、営業拠点を設けることを検討している。

 ただ、遠浅の海岸が多い英国やドイツには大きく後れを取っている。最近は基礎を海底に固定する従来の「着底式」に加え、沖合のより深い場所に設置可能な「浮体式」の開発が進み、日本はその普及とともに巻き返しを図ろうとしているが、まだまだ差は大きい。それどころか、投資の誘致に積極的な同じアジアの台湾にも後れを取りつつある。

 洋上風力は、建設・維持コストが高くつきがちで、漁業権を持つ漁協の理解を得る必要もある。日本の場合、それらに加えてルールが定まっていないことが障害となってきた。逆に法整備が進めば事業者にとってハードルはかなり下がる。経団連は将来的に浮体式だけで「50兆円規模の経済効果が見込まれる」とする。洋上風力の普及は、環境負荷低減や脱・原発依存にもつながるだけに、一刻も早いルール化が待たれる。