「ブラザー×コメダ」異色の社長対談・前編 名古屋企業が東京移転を検討もしない理由 (5/6ページ)

 【臼井】そういう意味では、フェアな国ですね。

 【小池】ブラザーの海外展開で、最もうまくいったのも米国です。現在の地域別売り上げ構成比率は、米州(北米・中南米・南米)が31.6%、欧州が25.1%、アジア他(オセアニア含む)が24.6%、日本は18.6%です。今でも「ブラザーはミシンの会社」と思われる方も多いのですが、海外を含めてミシン関連事業は、全売上高の12%弱になっています。1980年代に米国でタイプライターが支持されて以来、プリンター事業などを中心に海外の事業展開が進み、国内中心の会社から脱皮することができました。

 【臼井】企業の永続性を考えると、そうした変身力は見習いたいものです。私が最初にブラザーを意識したのも、中学時代に買ってもらったタイプライターでした。今でも覚えていますが、フタを開けると鮮やかなオレンジ色の商品です。

 【小池】ほう、そうですか。あの時代ですね。

 「マスター」と呼ばれるのがうれしい

 --2人とも、現場を重視する姿勢は共通だと感じます。

 【小池】ブラザーは毎年「社長賞」を設けており、私は出張日程をやりくりして、社長賞を受賞した海外の事業所に直接手渡しに行きます。一般には、受賞した職場の代表者を本社に呼んで表彰するのでしょうが、そのやり方では、各職場の取り組み実態や本社への不満も見えてこない。連結で約3万7000人の従業員がいますから、社長賞手渡しの目的は、ふだん会う機会がない職場の従業員の声を聞くことです。

数字やデータではわからない空気感を体感する