市内企業の高いポテンシャルが清水建設の課題解決につながったわけで、宇崎氏は「これを機に『大手の構想を中小で形にする』連携が進むといい。支援機関が中に入ることで、大手にもメリットが出ることが証明された」と喜ぶ。
利益出るまで支援
埼玉県でも中小連携が初の事業化を生んだ。産業技術総合研究所が提供した開放特許で、バーコード読み取り機大手のオプトエレクトロニクス(埼玉県蕨市)など4社がリストバンド型迷子防止札「おまわりQR」を共同開発した。
子供の名前や親の連絡先をQRコードを使って表示、専用バーコードリーダーで読み込む。イラストなどを入れられるため子供も楽しみながらバンドをつけるようになる。QRコードは一見して個人情報が書いてあるとは分からないので安心だ。
産総研と企業をつないだのが、埼玉縣信用金庫が立ち上げた中小支援機関「さいしんコラボ産学官」に特許庁から派遣された事業プロデューサーの鈴木康之氏。さいしんコラボにとって開放特許活用支援の第1号で、16年から特許庁が派遣する事業プロデューサーを受け入れたことが功を奏した。
鈴木氏は、利益が出るまで支援する「埼玉モデル」の生みの親で、「連携」をキーワードに中小支援を続けてきた。鈴木氏が就任したのは同10月で、「グループ化して得意分野を任せたほうが製品化までの時間やコストを抑えられる」と判断。12月にオプトに声を掛け、開放特許の活用を呼び掛けた。
「QRコードの読み取りは得意」(オプトの永瀬博行採用担当)と応じたが、アプリやソフトの開発、デザインなどは積極的に手掛けていないため、鈴木氏と話し合いながら連携先を選定。セキュリティーに強いシステム開発のグローバルソフトウェア(同本庄市)、印刷デザイン力をもつ五光印刷(同蕨市)、産総研の開放特許の実施許諾をもつブルーリンクシステムズ(東京都千代田区)が仲間に加わった。
今年6月にデモを実施、9月には権田酒造(埼玉県熊谷市)がブランド「直実」を盃(さかずき)の上にのせたイメージデザインでQRコードを作成、販促ツールとして使用している。迷子対策用として遊園地や海水浴場、商業施設などに売り込み中という。鈴木氏は「20年の東京五輪・パラリンピックの会場でも使ってほしい」と期待を寄せる。
埼玉モデルでは今夏に第2号案件も誕生、大企業の知財を中小企業に移転し新製品開発などをサポートする自治体の動きは一段と活発化しそうだ。(松岡健夫)