客を奪われた形の銀行は怒りが収まらない。ある地方銀行の幹部は「完全な民業圧迫」と指摘した上で「優良企業にも危機対応融資はなされており、おかしいと思ったことはあった」と証言する。
これが、1人の“不良社員”による行為であれば問題は限定的だったが、同様の不正行為はほぼすべての支店に及んでいた。
なぜ不正は広がったのか-。問題を調査した第三者委員会が職員を対象にしたアンケートでは、多くの職員が内情を赤裸々に打ち明けている。
中でも、指摘が多かったのは「危機対応融資のノルマ」についてだ。営業ノルマはどんな企業にも課せられるが、国の財源を使って中小企業を救済する融資のため、ノルマはそぐわない。
リーマン・ショックなどの危機が去り、景気が回復すれば企業業績も上向き、融資の条件を満たす企業は減っていくが、事業規模を維持するために現場にはノルマが課せられ続けた。
ある職員は「『平時』において、危機対応融資の予算消化を割り当てることで無理が生じ、職員を数値改竄に走らせた」と証言。現場では「パワハラ的な店舗経営」もあったという。
過度なプレッシャーの背景には、予算消化に対する経産省の圧力も見え隠れする。政府系金融機関であり続けるため、「『存在意義』『利用価値』をアピールするための手段として、危機対応融資を推進している印象」と受け止めた職員もいた。