■培った技術用い「イノベーション」を
--今年の事業展望について
「2017~19年度の中期経営計画『ビジョン2019』の2年目となり、最終年度に向けて着実に伸びていく。先行投資でまだ収益が得られていない(ヘルスケア分野の)再生医療事業と医薬品事業を収支とんとんへ持っていく計画で、最終年度は営業利益が過去最高の2300億円を達成できる見込みだ。売上高は2兆6000億円を目指す」
--成長の柱に位置づけるヘルスケア分野について
「写真フィルムを失って事業構造を大きく転換した。リーマン・ショック後に一旦落ち込んだが、新しく強化してきた分野がかなり軌道に乗ってきている。医薬品事業ではがんに効く薬をカプセル状にして患部に届ける『リポソーム製剤』の開発を手掛けている。薬剤量が少なくて済むほか普通の細胞を傷つけないため、かなり威力を発揮する。自社で培った技術を用い、既存薬に新機能を持たせて新薬にしようという『イノベーション』を目下、強力に進めている」
--再生医療にも注力する
「将来、巨大な市場に成長するのを見据え、日本で初めて再生医療製品を上市(販売)したジャパン・ティッシュ・エンジニアリングをグループ会社化、さらにiPS細胞開発・製造の米セルラー・ダイナミクス・インターナショナル、培地を供給できる試薬メーカーの和光純薬工業を買収した。当社にはフィルムで培った人工コラーゲンの『足場材』もあり、再生医療に必要なものを全てそろえてトップを走っている」
--写真やカメラの事業は順調だ
「インスタントカメラ『チェキ』の販売が世界的に好調でアナログが見直されている。本命はミラーレスカメラで、『Xシリーズ』はカラーフィルムで培った色を鮮やかにする技術が強みだ。画像センサーを大型化した中判ミラーレスデジカメ『GFXシリーズ』はポートレートなどの撮影に向き、順調に伸びている」
--傘下の富士ゼロックスの不正会計問題を受け、ガバナンス(企業統治)をどのように強化するか
「ゼロックスからは6人の役員に退任してもらうとともに、富士フイルムホールディングスからは7人の役員を派遣した。監査や経理も同じ部門でみて厳しい管理を行う。ただ、ゼロックスは複合機のトップメーカーで、先進的な技術を持ち商品力も高いため顧客の支持を受けている。ガバナンスを強め、富士フイルムの良さを取り入れ、両社の文化をミックスし、もっといい会社にしていきたい」
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【プロフィル】古森重隆
こもり・しげたか 東大経卒。1963年富士写真フイルム(現富士フイルムホールディングス)入社。富士フイルムヨーロッパ社長などを経て、2000年社長。12年から現職。長崎県出身。