これは職人としての使命だ 被災地で大活躍、元祖「パンの缶詰」を作った男 (3/6ページ)

 わが身を捨てて支援する秋元の思いは、次第に伝わっていった。テレビ報道などをきっかけに多数の義援金が集まるようになった。わざわざ200万円を届けに来た老夫妻もいたという。同社を助けるためにもパン缶を購入して被災地に送る企業や個人も増え、経営危機を脱することができた。

 今でも秋元は月1回、パン缶を持って東北地方を回っている。仮設住宅などに住む被災者に手渡すためだ。被災者支援は秋元のライフワークになりつつある。仮設住宅の台所が狭くて、揚げ物ができないと聞くと、揚げたてのドーナツやメンチカツを振る舞おうと現地へフライヤーも持参したこともある。

 パン缶は新たな社会貢献の仕組みも生み出した。備蓄用として購入されるパン缶は賞味期限が過ぎると廃棄されてしまう。あるとき、納品先の自治体から新しいパン缶を買うから、古いものを処分してほしいと依頼された。このままではせっかくのパンがゴミになってしまう。

 その時、スマトラ沖地震で津波被害を受けたスリランカの知人から「古くてもいいからパンがほしい」と依頼があった。秋元は、それならば廃棄前にパン缶を引き取って送ればいいと気づいた。

 ここから生まれたのが「救缶鳥」(きゅうかんちょう)プロジェクトである。パン缶で人を救うという意味だ。新しいパン缶を再購入することを前提に、取引先から賞味期限の切れる1年前、つまり購入2年後に古いパン缶を回収し、無償で国内外の困っている人に提供する。

缶にはメッセージを書き込む欄、励ましの言葉も届ける