【マネジメント新時代】AIで人間の仕事は次第になくなるか

トヨタ自動車が発表した自動運転技術のコンセプトカー「イーパレット」。AI普及に伴い自動車業界でも大量失職が起きるのか=8日、米ラスベガス(AP)
トヨタ自動車が発表した自動運転技術のコンセプトカー「イーパレット」。AI普及に伴い自動車業界でも大量失職が起きるのか=8日、米ラスベガス(AP)【拡大】

 □日本電動化研究所代表取締役・和田憲一郎

 最近、人工知能(AI)がどんどん進化すると、なくなる仕事が多くなるといわれている。なくなる仕事の筆頭として、小売店販売員、会計士、一般事務員、セールスパーソンなどが挙げられている。確かにAIが発達することで、仕事が効率化する面もあるかもしれない。ではこの問題はどう考えればよいのであろうか。年の初めに考えてみたい。

 ◆映画「ドリーム」から学ぶ

 昨秋、日本でも公開された映画「ドリーム」を見た方もいられるかもしれない。ご存じない方のために少し紹介すると、米国と旧ソ連が熾烈(しれつ)な宇宙開発競争を繰り広げていた1960年代初頭に、米国初の有人周回飛行の成功に尽力した米航空宇宙局(NASA)に勤務する3人の黒人女性の実話を映画化した「ヒューマンドラマ」である。

 この中で、IBMの大型コンピューターをNASAが初めて導入するシーンがある。

 当時の責任者は、多額の費用をかけて大型コンピューターを導入するため、もはや手計算で行っていた黒人女性の補助技術者は不要になると思っていた。

 しかし、現実は真逆であった。大型コンピューターを稼働させるために、新たに膨大なソフトエンジニアが必要になったのである。これを見て「あぁ、何となく今と同じだ!」と思ったのである。AIやそれを活用する自動運転車は、それを動かすコンピューターエンジニアやAIエンジニアが必要になる。

 にもかかわらず、多くの経営者はAIを導入することで、人員が削減することができると考えている。確かに単純作業はAIにより自動化が進むかもしれないが、どのようにAIを制御するのか、プログラム作成や指令を行うエンジニアは膨大に必要になるのではないだろうか。

 これに近いことを最近経験した。昨年12月24日、第11回の「日中省エネルギー・環境総合フォーラム」の「自動車の知能化・電動化分科会」に出席したときのことである。分科会発表として、中国の配車サービス大手、滴滴出行の副総裁の王欣氏が講演を行った。

 私は、滴滴を米ウーバー・テクノロジーズの中国版ととらえていた。しかし、自身がコンピューター・サイエンスの技術者であり、ボストン大学の経営学修士(MBA)も持つ王氏によれば、滴滴は従業員7000人の半数がビッグデータやAI関連のエンジニアであり、滴滴の使命として、人口集中で失われつつある交通機能を、AIを活用したシェアリングで補完しようとしている。さらには2022年までの目標として、「自動車と交通業種の変革を牽引(けんいん)する世界トップの科学技術型会社」を目指すという。

 つまり、これらの話は、AI導入で人が減るのではなく、今後AIをコントロールする人が一段と必要になることを示している。シェアリングエコノミーが世界各地で拡大する中、上述の動きはますます広がるのではないだろうか。

 別の話題として最近、「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)」という言葉をよく聞くようになった。公共交通機関やレンタカー、タクシー、レンタサイクルなどを組み合わせて人の移動を行うサービスを示す。16年のITS世界会議で英トランスポート・システムズ・カタパルト社が提唱した概念といわれている。

 MaaSは、コネクティッドカー・自動運転技術・電動化の進展が、モビリティーを所有するのではなく、サービスに移行することで、ビジネスとする考え方である。

 ◆コントロールに多数の人材

 しかし、これらのビジネスを推し進める上でAIは重要な役割を果たす。これも同様にそれをコントロールするには多数のエンジニアが必要となるのではないだろうか。

 一方、日本私立学校振興・共済事業団によれば、100を超える私立大学法人が定員割れなどにより、数年のうちに経営破綻になる恐れがあると予測している。一方では人が足りず、一方では定員割れが続く。確かに不要となる仕事もあるが、将来を見据えたとき、どのような人財を教育し、産業界で活用していくのか、今後の大きな課題と思われる。

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【プロフィル】和田憲一郎

 わだ・けんいちろう 新潟大工卒。1989年三菱自動車入社。主に内装設計を担当し、2005年に新世代電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」プロジェクトマネージャーなどを歴任。13年3月退社。その後、15年6月に日本電動化研究所を設立し、現職。著書に『成功する新商品開発プロジェクトのすすめ方』(同文舘出版)がある。61歳。福井県出身。