【2018 希望への展望】川崎重工業社長・金花芳則さん(63)


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 ■変化に素早く対応 鈍いイメージ払拭

 --昨年の世界経済を振り返って

 「徐々に景気が上向いている感じがする一方、不安要素もある。欧州は思ったより良く、当社では二輪車が割と売れている。中国も予想以上に堅調で、産業用ロボットを増産している。他国も概(おおむ)ね良い方向に向かっているが、トランプ米政権の政策や中東の政治情勢など、ふとしたきっかけで再び悪化する恐れがある」

 --中国のロボット市場をどうみる

 「中国は最近、労働人口が減り始めており、一人っ子が増えて『きつい、汚い、危険』の3K仕事を嫌う傾向がある。このためそれ以外の国に比べ、はるかに需要の伸びが高い。蘇州の工場はフル生産状態が続き、昨年春には重慶の拠点で双腕型ロボット『デュアロ』の組み立てを始めた」

 --昨年11月に3カ年中期経営計画の目標を下方修正した

 「2016年4月の始動時に想定していた各社内カンパニーの売上高と利益で目算が狂った部分がある。鉄道車両でアジアの案件が消滅・後ずれしたほか、米ボーイングの旅客機『777』の減産で部品需要が予想以上に落ちた。時期が後ろ倒しになったものは取り返しが利くし、旅客機市場は30年ごろには現在の2倍になる見通しだ。方向性は間違っていない」

 --造船では改革を加速している

 「(社長直轄の)構造改革会議が昨年3月末に出した結論は、個別の施策を全部実行できれば事業存続の条件である投下資本利益率(ROIC)8%をクリアできるとのことだった。香川県坂出市の造船所でドックを1本閉鎖し、中国に2カ所ある合弁造船所に生産をシフトする。確実に建造コストは下げられるし、納期も守れる。一番大事なのは受注だ。年間で液化天然ガス(LNG)船を1隻、液化石油ガス(LPG)船を2隻獲得していきたい」

 --カンパニー間の垣根を取り払おうとしている

 「トップ、部課長、現場担当者の各レベルで新しい仕組みを考えている。私は毎朝30分、テレビ電話でカンパニーのトップと話をしている。部課長向けの研修では、各カンパニーから参加した約20人が一緒に泊まり込んだりして、すごく仲良くなっている」

 --今年の抱負は

 「こういう環境変化が厳しい時代で生き残るには、(変化に)組織として素早く柔軟に対応しないといけない。これまでの当社は動きが鈍いイメージだったが、中計の期間中に体質を変え、次の成長につなげたい」

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【プロフィル】金花芳則

 かねはな・よしのり 阪大基礎工卒。1976年川崎重工業入社。執行役員、常務、副社長などを経て、2016年6月から現職。兵庫県出身。