
テスク資材販売が開発したプラスチック樹脂製の熱交換器【拡大】
■樹脂製の温泉用熱交換器でエネルギー有効活用
北海道は、温泉の源泉が2000カ所を超え、未利用再生可能エネルギーとして、その熱の有効活用が期待されている。温泉水や温泉施設で利用し終えた「排湯」を熱源とする温泉熱回収用の「プラスチック製柵状熱交換器」を開発したのが、建設会社テスク(札幌市中央区)傘下のテスク資材販売だ。北海道や北海道経済産業局から表彰されるなど、期待されている。
同熱交換器は昨年10月、北海道が主催する2017年度「北海道省エネルギー・新エネルギー促進大賞」の省エネルギー部門大賞と、「北海道新技術・新製品開発賞」ものづくり部門優秀賞を受賞。さらに12月25日には、北海道経産局による、17年度の「北国の省エネ・新エネ大賞」開発・製造・普及部門優秀賞受賞も決った。
同社の丹英司社長は「北海道立総合研究機構(道総研)との共同開発で培った技術が高い評価を受けた。これまで同じ年度に3つ賞を受賞することができて驚いている」と相次ぐ受賞に戸惑いながらも喜びを隠さない。
◆腐食や汚れに強い
温泉の熱を利用する熱交換器はこれまで金属製プレートを使うのが一般的だったが、強酸性や固形物を多く含む泉質では腐食や不純物の付着による目詰まりなど、課題が多かった。「当社の熱交換器はプラスチック製の管を、独自開発した熱融着技術で接合し、柵状に加工した」(丹社長)ものだ。金属よりも熱を通しにくいものの、腐食の心配がなく軽量、安価で、温泉の成分が付着する汚れも落としやすいなど温泉の熱利用に向く、大きなメリットがある。
熱交換器の形状は、さまざまな施設に対応できるように柵状にした。単位容積当たりの熱交換伝熱面積を増加させ、熱回収能力を向上させた。
これまで道総研と道内3カ所の温泉施設で実証実験を行った。温泉で使われたお湯を入れたプール状の箱に熱交換器を浸し、管の中に水道水を循環させて熱を吸収させ、ボイラーの貯湯槽に送る装置で、一次エネルギー削減量は28%と高い効果が得られている。
また、試験導入した銭湯では、ボイラーの燃料使用量を4分の1削減できた。設備導入から2年数カ月程度で設備費と工事費を合わせた投資を回収できるといい、経済性も十分高い。
◆全国普及目指す
親会社のテスクは1996年に創業。マンションの企画・設計、賃貸管理・修繕工事など、長期安定型の賃貸マンションを運営するための建物づくりから、完成後の経営サポートまで事業を展開している。
01年に開発した外断熱工法「ハイパール工法」は、壁面の結露を防ぎ、従来の内断熱に比べ冷暖房費が30~40%削減できる。これらの技術などをもとに建設会社や工務店など65社のパートナー企業があり、全国で普及を目指している。
テスク資材販売は、テスクが04年に設立。プラスチックの特性を生かせる独自の融着技術を確立し、ふく射式冷暖房ラジエーターを開発、11年に「クール暖」として製品化した。この技術が樹脂製柵状熱交換器の開発につながっている。
丹社長は「今後はテスクの外断熱工法を全国に拡大にさせるとともに、テスク資材販売のプラスチック融着技術を使った新しい製品開発を展開したい」と、省エネ製品の普及を目指していく。(川端信廣)
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【会社概要】テスク資材販売
▽本社=札幌市中央区北7条西20丁目2-1 TSCビル ((電)011・611・6650)
▽設立=2004年10月
▽資本金=1000万円
▽従業員=4人
▽売上高=6110万円(17年3月期)
▽事業内容=建築、土木資材、暖冷房設備、換気設備資材の販売
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□丹英司社長
■「ものづくり」から「ことづくり」へ
--創業からのキーワードは
「人の健康、地球環境への配慮が求められている。地球温暖化対策、健康対策、産業廃棄物対策が3つ。テスクの社名や社訓も技術(Technology)のT、誠実(Sincerity)のS、挑戦(Challenge)のCからとっている」
--企業として目指すのは
「『ものづくり』から『ことづくり』へをモットーに、既存のエネルギー消費削減に努めるとともに、未使用エネルギーの活用から、環境負荷の軽減まで目指す事業を展開している」
--省エネルギー技術の開発に力を入れている
「テスク独自の外断熱工法や、テスク資材販売のプラスチック樹脂の冷暖房パネル、温泉水向けの熱交換器などを開発してきた。これまでに取得した、特許など産業財産権は200件を超える」
--外断熱工法はじめ全国に展開している
「寒い土地で生まれた技術は暑い土地でも効果を発揮する。高気密・高断熱の省エネ住宅は北国だけでなく南国でも求められる性能だ。テクスでは技術研究会やマニュアルの徹底により、ゼネコンやマンションビルダーなど全国各地に65社のパートナー提携契約を結んでいる。鉄筋コンクリート造りの建設ネットワークでは業界最大規模となった」
--今後の展望は
「テスクは、賃貸住宅マンションなどで長期安定型経営をサポートするなど、全国各地にパートナー提携を拡大していく。また、プラスチック熱交換器は今回の受賞を機に全国の温泉施設などに普及させるため、啓発活動を進める。農業、水産業、酪農業にも利用を提案したい。異業種分野だが産業施設、ビル空調などの省エネ化、雪や地中熱、海水を使用する陸上養殖業者などから引き合いがきているので、具体的なシステム化を進め普及・啓発に努めたい」
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【プロフィル】丹英司
たん・えいじ 函館大商卒。92年近藤商会(北海道函館市)に入社。97年テーオー小笠原(同)を経て、2001年テスク入社。08年常務、12年専務、13年から社長。14年からテスク資材販売社長を兼務。49歳。北海道出身。
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≪イチ押し!≫
■コンパクト設計で利用の場拡大
北海道立総合研究機構(道総研)と共同開発したプラスチック製柵状熱交換器。一般的に熱交換器は、熱が伝わりやすい金属が使われている。しかし温泉水や、それを利用した後の排湯を熱源にする場合は、含まれる固形物による目詰まりや酸アルカリに対する腐食で、メンテナンスや寿命が課題になる。プラスチック製は腐食に強く、汚れの除去もしやすい。
熱の伝わりにくさをカバーするため単位容積当たりの熱交換伝熱面積の増加を図り、プラスチック(ポリプロピレン)製の薄型管を独自の融着技術で多数配置した柵状にまとめた。コンパクトになり、さまざまに施設での利用が可能になった。
実証実験を行った入浴施設では約35度の排湯から熱を回収し、11度の井水を22~24度まで昇温。ボイラーで60度に加温してシャワーなどに利用した。