ヤマハ初の女性開発チーフが語る「バイク愛」 “二輪大国”東南アジアでの光景に喜び (2/3ページ)

 技術に性別は関係ない。自信を持って発言する

 大学にいた頃から、女性が少ない環境には慣れていた。配属後に女性初のチーフだと聞いたときも、「そうなんだ、と思っただけでした」と彼女は続ける。

 「初めて女性がチーフになることに対しては、むしろ周りの人たちが気をつかっていたように思います。技術の内容に性別は関係ありません。変に意識することなく、自分の技術力を信じて堂々と発言すればいい。車両を触るとき、重くて持ちあがらなかったり、ボルトが回らないようなときは、素直に『助けて』と言って手を貸してもらいますけど(笑)」

(上)ASEAN向けモデルを担当しているため、海外とのメールのやりとりも多い。(下)会議で「女の子が乗ったとき、きれいに見えるシート」を提案したことも。女性ならではの視点が武器になる(PRESIDENT Onlineより)

(上)ASEAN向けモデルを担当しているため、海外とのメールのやりとりも多い。(下)会議で「女の子が乗ったとき、きれいに見えるシート」を提案したことも。女性ならではの視点が武器になる(PRESIDENT Onlineより)

 ヤマハ発動機の開発では、1台の開発モデルにつきエンジン、車体、電装、実験……とプロジェクトチーフがおり、プロジェクトリーダーのもとで企画の段階から会議を重ねる。設計から海外の工場での製造まで、チーフがそれぞれの責任者であり続ける仕組みだ。

 「プロジェクトチーフになってからは、モデルに対する愛着がこれまでと全く変わりました。以前は仕事が好きでも、自分の担当しているシステムだけを見ているという気持ちでいたんです。でも、チーフとして商品の企画から製造までかかわると、『こうしたい』という自分の思いが最終製品に込められていきます。会議で発言すれば、『電気がこう言ってるぞ』と開発の全体に影響が及ぶので、言葉の一つひとつに責任を持たなければなりません。仕事をしていて見える風景が、全く変わってしまうような経験でした」

 プロジェクトチーフになって以来、上田さんは複数モデルの仕事を同時にこなす設計・実験のエンジニアに、自分の担当するモデルをいかに特別なものに感じてもらうかに気を配ってきた。そのために開発の経過や関連する情報をすべてオープンにし、エンジニアたちと共有するよう心掛けていたという。

エンジニアを巻き込み、商品に愛を注いでいく