
会見後握手する左から、植木義晴氏(日本航空代表取締役社長)と次期社長就任予定の赤坂祐二氏(日本航空常務執行役員整備本部長)=24日午後、東京都品川区(宮川浩和撮影)【拡大】
日本航空の植木義晴社長が24日、退任を発表した。経営破綻後のかじ取りを任されて6年。パイロット出身ならではの決断力で“乱気流”からの立て直しを果たした。業績好調の中でバトンを引き継ぐ日航だが、航空業界を取り巻く競争環境は厳しさを増しており、今後も成長軌道を描けるか、正念場を迎えている。
「1つ問題を解決したら2つの課題が降ってくる、そんな6年間だった」。植木氏は24日の会見で、激動の任期をこう総括した。
日航は2010年、世界的な金融危機を引き金に約2兆3200億円の負債を抱えて経営破綻した。植木氏は12年2月の就任から、約半年で再上場を実現。その後も、部門別採算の徹底や予約システムの刷新などの再建策を断行し、日航はいまや営業利益率14.3%、自己資本比率57.3%という高収益体質を誇る。
経営再建の過程で受けた約3500億円の公的支援に伴い、国土交通省が「競争環境の是正」を名目として新規路線開設や新規投資を事実上制限していたが、昨年4月に解禁された。日航は今年度、羽田-ニューヨーク便や成田-メルボルン便などの新規路線を開設して攻めに転じている。
“カリスマ機長”がタラップを降りた今後、日航は成長継続が課題となる。
訪日外国人客数が「20年に4000万人」という政府目標の達成が視野に入るなど順調に増えるほか、日本人出国数も回復基調にある。ただ需要拡大の一方、航空業界はライバルのANAホールディングスだけでなく格安航空会社(LCC)を含めた海外勢とのシェア争いも激しさを増す。会見で、次期社長の赤坂祐二氏は「競争環境の厳しさは理解している。航空以外でも強みが生かせる分野には積極的に挑戦していく」と口元を引き締めた。(佐久間修志)