なぜラーメン二郎は“パクリ店”を許すのか 追従者を蹴落とさない精神 (2/5ページ)

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 20~40代男性の5人に1人がジロリアン

 しかしそれでも客足は絶えず、常に店内は満席、外には長蛇の列ができている。ちなみに自らもジロリアンだという牧田幸裕氏(信州大学)のフェルミ推定によると、ジロリアンは全国で105万人。これは首都圏20~40代男性の5人に1人に相当するという。

 「お客様満足」を題目とする企業がこれだけ増えた今日、二郎の顧客を突き放すような姿勢は、ある意味爽快でもある。豚のゲンコツを煮出したフルボディのスープ、チャーシューは直方体、盛られた野菜はもはや円錐状態と、「これでいいのだ」という自信に満ち溢れた姿形を見れば、これがタダものでないことくらい誰にでもわかる。店側が一つの信念からつくり上げたモノを真剣にぶつけられたと感じた客側も、それに真剣に呼応せざるを得ない。この得体のしれない存在感と奥深さに畏敬の念を感じつつも、額に汗してそのラーメンを制覇することに、ジロリアンたちは喜びや生き甲斐さえ見出すのであろう。

 採算を度外視しても最高級品を市場投入する

 崇拝型のブランドにおいては、求道的な消費スタイルがより強く発揮される。むろん情報機器にしてもジャムにしてもラーメンにしても、誰もが簡単に楽しめる消費財にすぎない。しかしそれぞれの世界は奥深く、真の楽しみを知るためには、それなりの消費経験や知識が必要となる。その奥深さを小さな入口から垣間見せることが、崇拝型ブランドへのルートといえよう。

 最近、マス向け消費財のメーカーにおいて、採算を度外視しても最高級品を市場投入するケースが相次いでいる。クリネックスティシューの「至高」「極」「羽衣」(日本製紙クレシア)、カルビー「かっぱえびせん匠海」、スターバックス「パナマ アウロマール ゲイシャ」、伊藤園「お~いお茶 玉露」などが代表例である。言葉で主張するのではなく、実際につくり上げた最高の商品で、自社の持つ技術の奥深さや、本気度、すごみを感じさせようとする狙いといえよう。コモディティ化が懸念される商品ジャンルにおいては、こうした形でブランド至高体験を提供していくのも、一つの選択肢である。

崇拝型ブランドは顧客の気持ちを考慮しない?