【高論卓説】「西郷どん」時代考証批判にうんざり ドラマをつまらなくする定説の押し付け (3/3ページ)

 会議でも研修でも面談でも、あれが駄目だ、これも駄目だと駄目出しに終始したり、それは正しいこれは正しくないと既存の定説に沿って成否を判断したりしてばかりいるから、こうなるのだ。私が企業をサポートする際に、「どんな意見でもおっしゃってください」「お考えの途中でも聞かせてください」「異論や懸念を共有しましょう」と自身の内なる声を聞くことにこだわり続けているのは、定説への盲従から脱却するためだ。

 史実に照らして問題だとどれだけ指摘があろうとも、時代考証が甘いとどれだけ批判があろうとも、これからも独創的な解釈で、奇抜な設定を繰り出していただきたい。こんな設定もあるのだ、それほど自由な解釈もできるのだという肌感覚を持ってもらうことこそ、ビジネスの伸展と革新につながるに違いない。明治維新の立役者、西郷隆盛を描くドラマの仕立てそのものが、維新の精神を伝えてくれることを期待してやまない。

【プロフィル】山口博

 やまぐち・ひろし モチベーションファクター代表取締役。慶大卒。サンパウロ大留学。第一生命保険、PwC、KPMGなどを経て、2017年にモチベーションファクター設立。横浜国立大学非常勤講師。著書に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社)。55歳。長野県出身。