日本ペイントホールディングス(HD)が筆頭株主の反発で揺れている。巨額買収をめぐる対立から、株式の約4割を握るシンガポール塗料大手、ウットラムグループが1月、取締役の過半数を送り込む株主提案を提出。M&A(企業の合併・買収)によって進めてきた拡大戦略の見直しを迫られる可能性が出ている。
日本ペイントは昨年11月、米塗料大手アクサルタ・コーティング・システムズを1兆円規模で買収することを目指したが、条件が折り合わず、合意寸前で交渉は破談した。
ウットラムは買収に対し、増資で1株当たりの利益が減るなどとして反発。日本ペイント経営陣への不信感を強め、株主提案に踏み切ったとされる。日本ペイントは会社側の提案に一本化するよう働き掛けており、2月中の決着を目指している。
世界の塗料業界では近年、米シャーウィン・ウィリアムズが米同業を113億ドルで買収するなど、大型再編が相次いでいる。価格競争で優位に立つには、規模拡大による原材料の調達コストの削減が欠かせないためだ。
日本ペイントも2014年にウットラムとの合弁会社8社を連結子会社化したほか、17年には米国と中国の企業を相次いで買収。14年度に約2600億円だった連結売上高は、17年度に6000億円を超えるまでに拡大した。
田堂哲志社長は今月14日の記者会見で「欧米でも引き続き買収を探索していく」と述べ、今後も拡大戦略を維持する方針を強調したが、実現にはウットラムの理解を得る必要がある。
ウットラムはアジアでの事業展開で、50年以上にわたって協力関係を築いてきた「欠かせない事業パートナー」(日本ペイント幹部)だ。ただ、過去には日本ペイント買収に動いたこともあり、関係は必ずしも良好ではない。