【遊技産業の視点 Weekly View】


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 □ホールマーケティングコンサルタント、LOGOSプロジェクト上級研究員・岸本正一

 ■演出過多批判に思う「面白さとは何か」

 液晶画面を搭載したパチンコ機が主流となって以来、リーチ発生時にさまざまな映像や特殊なサウンドによる「リーチ演出」なるものが当たり前のように搭載されるようになった。3つの数字がそろえば大当たりという基本的なゲームロジックは同じなのだが、そこに至るまでのプロセスを遊技者に一層楽しんでもらおうというのが狙いだ。

 しかしながら近年、「行き過ぎた演出」に対するプレーヤーの批判も聞かれる。「リーチが長すぎる」「大げさすぎる」という声の存在は、これらに関するプレーヤーアンケートからも裏付けされている。実は、筆者は「演出」という言葉に奇妙な違和感を覚える者の一人だ。確かに、このようなゲーム表現手法は、まさに「演出」と呼ぶにふさわしいものなのだが、そもそもパチンコという遊びに「演出」が必要なのかという疑問がふと頭をよぎるのだ。

 例えば、マージャン。代わり映えのしない決められた図柄の牌でいまだに多くの愛好家がこれを楽しんでいる。カジノのカードゲームも然り。恐らくこれらの遊びに「演出」なるものを誰も求めておらず、その場の雰囲気自体が「演出」として成立しているのだろう。

 言うまでもなく、パチンコは遊技機という装置を相手に楽しむものであり、マージャンやカードゲームとは異なる。また、ゲームスキルが勝敗に影響を大きく及ぼすという点も現在のパチンコとは異なる。しかしながら、そこに存在する何らかの面白さは、「リーチ演出」のような手法で生み出されるものばかりに依存するのではなく、マージャンやカードゲームのようにプレーヤーの想像力や感性に委ねるというのも一手ではないだろうか。

 面白さをメーカー側が一方的に最後まで創り上げようとするのではなく、プレーヤーにある程度意図的に依存することにより、本当にプレーヤーが好む遊技機が誕生しそうな気もする。そもそもパチンコは、「演出しなければつまらない」という遊びではないと考える。多少のスパイスは有効だろうが、スパイスがメインとなれば話はおかしくなる。

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【プロフィル】岸本正一

 きしもと・しょういち 1963年生まれ。元SEの経験を生かし、遊技場の集客メカニズムを論理的に整理・研究する傍ら、全国のパチンコホールを対象にコンサルティングを行う。雑誌への連載やテキストの出版、セミナーでの講演なども手掛ける。オベーション代表。