【高論卓説】75歳定年制の薦め 現実に即応、働き方改革の第一歩 (2/2ページ)

※画像はイメージです(Getty Images)
※画像はイメージです(Getty Images)【拡大】

 そこで筆者は次の提言をしたい。すなわち、民間企業も官庁も地方自治体も働く人の定年を一斉に75歳まで引き上げることである(もちろん健康状態などで就労不能の人は除く)。これは、民間企業で採用され始めた定年から65歳程度まで給与を減額した上での再雇用制度ではない。あくまでも、正社員が昇進昇給を続ける最高年齢を75歳とするものである。職業人生を20代初めから75歳まで正社員として昇給昇格を続け、50年以上続けることができるようにするのである。

 75歳定年制は、少子高齢化が進展し、健康寿命が伸び続ける日本の現実にまさにふさわしい制度である。こうすることにより、年金支給開始年齢は75歳に引き上げることができるし、高齢者の健康寿命も延びる効果があるので、日本の年金会計と健康保険会計が著しく改善することは間違いない。

 「構造改革」が唱えられて久しいが、少子化と長寿化が急激に進んでいるわが国において、構造改革の基本は人口動態に合った就労制度と年金制度の改革である。定年制度の大幅な改革による思い切った定年の引き上げを行わずに、財政改革は実現しない。一度定着し、当たり前と考えられている制度も、現実の変化に即応していかなければ、国家社会の永続的な発展は期待できない。

 例えば、今から思えば国鉄の分割民営化は画期的な新機軸でまさに正しい判断であったと考えられるが、分割化当時は反対論も極めて根強かった。同じように、職業人生50年超という働き方を国民に等しく提供する定年制の抜本改革こそ、将来の日本の大発展を支える制度改革であると信じている。

 現在働き方改革の議論がやかましいが、働き方改革の第一歩は定年年齢の大幅一律な引き上げである。

【プロフィル】杉山仁

 すぎやま・ひとし JPリサーチ&コンサルティング顧問。一橋大卒、旧三菱銀行入行。米英勤務を11年経験。海外M&Aと買収後の経営に精通する。著書『日本一わかりやすい海外M&A入門』ほか、M&Aと経営に関する論文執筆や講演も多数。69歳。東京都出身。