【ベンチャー支援の現場から】プロ投資家の出資案件のみ扱う

沢村帝我CEO
沢村帝我CEO【拡大】

 ■エメラダなど CFで資金調達

 創業初期から成長期のベンチャー企業にとって、事業拡大とともに頭を悩ませるのが資金調達だ。信用力が乏しいベンチャー企業にとって、銀行などからの融資を受けることは並大抵ではない。そこに風穴を空けつつあるのが個人投資家からクラウドファンディング(CF)を通じた資金調達だ。

 オンラインによる資金調達のプラットフォームを手がけるエメラダ(東京都千代田区)は2017年11月から、CFを使って個人投資家の資金をベンチャー企業に供給する「エメラダエクイティ」を始めた。

 すでに、クラフトビール醸造のファーイーストブリューイング(同渋谷区)には173人の個人投資家から総額約4600万円、ランナー向けアプリのラントリップ(同)も152人から同約3200万円の資金が集まった。

 今年2月に、人工知能(AI)による投資アルゴリズム(手順)を開発するスマートトレード(同大田区)が2回に分けて総額7000万円の募集額で出資を募ったところ、2回ともわずか数日で募集額の上限に達した。

 CFを使って個人投資家からの資金を集める仕掛けは他社でも存在するが、エメラダの強みは「プロの投資家が出資している案件しか扱わない」(沢村帝我CEO=最高経営責任者)ことだ。

 ベンチャー先進国の米国では、成功したベンチャー企業出資者に著名なプロの投資家の名前があるケースが少なくない。言い換えれば、「そうした案件のなかでCFを通じて個人投資家から資金を募っているものの大半は成功している」(沢村CEO)という。

 エメラダのほか、日本クラウドキャピタル(同品川区)も「FUNDINNO(ファンディーノ)」を運営。17年に出資を募ったフィンテックベンチャーのバンクインボイス(同中央区)、オリジナルTシャツ製造販売のオールユアーズ(同世田谷区)、起業支援のMOSO Mafia(同港区)へのファンディーノを通じた出資について、税制上の優遇措置が得られるエンジェル税制の対象となった。

 未公開のベンチャー企業への投資といえば、とかく詐欺まがいというイメージも少なからずつきまとう。独創性にあふれる技術やサービスを開発しても、それを実証するための場所や資金の確保に頭を悩ませるベンチャー企業も少なくない。

 一方、日銀によると日本国内の個人資産は1800兆円にのぼるとされる。ただ株式への投資はこのうちの10%程度に過ぎず、大半は現預金だが、マイナス金利の状況下ではほとんど利息もつかない。未公開企業への投資がCFで身近になるかもしれない。