メーカー

午後4時半終業に踏み切った味の素 働き方改革にかける社長の本気、現場からリポート (6/7ページ)

 そこで、2人目の子どもが生まれるタイミングで、働いていた妻のことも考え、職場を変えようと決意。

 「1人目のときは、家族でご飯を食べることもなかったですし、土日もお客さまに呼ばれれば仕事、家にいても疲れ果てて寝ていました。当然子どももなつかない(苦笑)」

 次の会社は「キャリアも家族との時間も大切にして柔軟に働けるところ」にしようと、慎重にリサーチした末、味の素に決めた。

 「『会社はオプションを提示します。そのなかから自分に合った働き方をピックしていっていい』と言われました。勤務時間や働く場所にも、選択肢を与えてくれるというのが転職の決め手でした。今は海外との深夜のミーティングも、帰宅して子どもとご飯を食べて寝かせてから、家からウェブ会議ができます。ヨーロッパで育ったので、家族と夕食をとるのは当たり前のことでした。働き方の選択肢がたくさんあるというのはとても幸せなことだと思います」

 しかし同時に厳しさもある。権利には責任もついてくる。

 「労働時間は非常に短くなりましたが、昔よりも会社が大きくなり、海外との取引も多く、仕事はむしろ増えているはず。本当に効率化が必要です」

 グローバルの人材獲得は、日本的な働き方では無理

 味の素は現在130カ国・地域とビジネスをし、社員約3万3000人のうち、日本にいるのは1万人だ。働き方からグローバル企業にならなければ、海外の人材は働きにきてくれない。西井社長は、海外の人材が日本で働いてくれるような環境を整えるのがリーダーの役割だと思っている。

 「3つやらなきゃいけないことがあります。1つはリーダーシップ。もう1つはインフラを整えること。最後は一番時間がかかりますが、一人一人のマインドセットを変えていくこと」

 インフラは大方整えている。働き方改革でもたらされた利益はすべて人材に投資すると社員と約束をしているからだ。給与体系や評価基準も変えた。改革と連動して人事制度を改訂し、管理職は完全職務グレード制に移行しているので、いわゆる「年功」に甘えることができない仕組みだ。機会あるごとに繰り返し、この改革の意味を訴え、取り組みを紹介している。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus