【フロントランナー 地域金融】飛騨信用組合の電子地域通貨の取り組み(3)


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 ■アプリ連動 機能の追加も容易に

 フィンテック(金融とITの融合)事業の具体化に向けて飛騨信用組合が着目した電子決済。焦点となったのは、飛騨高山を訪れる年間450万人の観光客の決済手段としての機能だ。

 ただ、単なる電子マネーのような形態では新規参入のメリットがなく、地域金融機関として取り組む意義も見いだせない。同組合の大原誠理事長は「観光客の方々にこの地域でより多くのお金を使っていただくことに加えて、地域内の皆様にもより継続的かつ積極的に使っていただける性格のサービスが必要と感じていた」という。

 地域でお金を使う機会を増やし、地域内で資金を循環させられる機能。そこで出された答えが「地域通貨」の電子化だった。

 地域通貨のメリットは、一般に「地域の結びつきを強める」「地域貢献する人口を増やす」ことなどとされる。逆にデメリットは「外部からの消費を呼び込みにくくい」ことだ。飛騨信用組合が「さるぼぼコイン」で目指したのは、地域内で電子通貨システムを展開するメリットを最大限享受しながら、外部からの消費も獲得することだ。

 古里圭史理事は「いくつかの要素が絡み合って、電子地域通貨、そして『さるぼぼコイン』の実現可能性を測ることができた」と話す。

 一つは「ひだしんさるぼぼ倶楽部」の存在だ。加盟店という地域通貨流通のためのインフラが整っていたことに加え、割引や特典提供というサービスの仕組みがすでに組合員に受け入れられていたことは、電子地域通貨というなじみのない決済手段の理解を促すのに役立った。「『ひだしんさるぼぼ倶楽部』の取り組みでは、地元企業である加盟店振興の目的で、加盟店だけで使える商品券のようなものも発行していました。つまり、紙ベースではありましたが、すでに地域通貨が浸透している土台があったわけです。『さるぼぼコイン』の基本的な概念はこの加盟店限定の商品券と同じものですから、組合員の方々にも抵抗なくお使いいただけることが想定されました」(古里理事)

 もう一つは、新たな収益源としての将来性だ。「さるぼぼコイン」はスマートフォンアプリの形式をとることで、電子決済にとどまらない機能の追加・拡充を可能にしている。「決済・換金にかかる手数料という基本収益だけでなく、例えば加盟店向けの付帯サービス提供による収益獲得といった、展開の多様性が当初から確認できていたことは、将来性を計るうえでとても大きかった」と古里理事は話す。

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 (編集協力)近代セールス kindai-sales.co.jp